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2020年に50kWの低圧(低圧=50kW未満で連系する区分)野立て太陽光を買った方が、電力会社からの売電明細に「解体等積立金」という控除項目が並んでいるのに気づき、20年後のパネル廃棄でいくら自己負担になるのかと問い合わせてくる場面が増えています。結論から言うと、事業用太陽光(10kW以上)の廃棄費用は自分で貯金するのではなく、改正再エネ特措法の積立制度によって売電収入から自動で先取りされます。判断の軸は3つで、第一に自分の認定年度に対応する「解体等積立基準額(円/kWh)」がいくらか、第二に積立が始まるのは調達期間の終了10年前からである点、第三に積み立てた額が将来の実費を賄えるかどうかです。この記事では、その積立額を実際の数字で明細化し、開始時期と取戻し条件、中古売買での扱いまで整理します。
太陽光のパネル廃棄費用は「積立」で先取りされる仕組み

廃棄費用の外部積立制度は、改正再エネ特措法(第15条の6〜第15条の10)に基づく制度です。対象は事業用太陽光発電(10kW以上)のFIT/FIP認定事業者で、住宅用の10kW未満は対象外です。積立先は電力広域的運営推進機関(推進機関)で、FIT案件では買取義務者である電力会社が買取費用から解体等積立金を差し引いて納付する、いわば源泉徴収的な外部積立てが原則です。長期に安定して発電を続ける責任と能力が認められる事業者に限って、自社で積み立てる内部積立てが認められます。
そもそもこの制度は最初から外部積立てだったわけではありません。2018年4月に事業計画策定ガイドラインで積立てが遵守事項とされ、同年7月から定期報告で積立状況の報告が義務化されました。ところが実施率が低く、20年後に撤去費用が用意されていない発電所が大量に出る懸念が強まったため、売電収入から強制的に差し引く外部積立てへと切り替えられた経緯があります。太陽光投資そのものの利回りの考え方は太陽光投資とは|売電の仕組みと実質で手元に残る利回りで扱っていますが、廃棄費用は「実質利回り」を押し下げるコストとして必ず織り込む必要があります。
いくら積み立てるのか|50kWの明細と基準額の推移
積立額の計算式はシンプルです。解体等積立金は「その月に供給した再エネ電気の量(kWh)×解体等積立基準額(円/kWh)」で、検針日ごとに1か月単位で積み立てられます。基準額は積立対象区分ごとに経済産業大臣が毎年度定めます。2026年度に認定を受けた区分の基準額は、地上設置10kW以上50kW未満が0.60円/kWh、地上設置50kW以上が0.62円/kWh、屋根設置が1.12円/kWhです。実際に適用されるのは「その設備に適用される調達価格・基準価格に対応する基準額」です。
では50kWの低圧地上設置を例に、積立の総額を概算してみます。算定委員会の想定設備利用率21.3%(地上10kW以上50kW未満の想定値)で計算すると、年間発電量はおよそ9.3万kWhになります。基準額0.60円/kWhを掛けると、年間の積立額は約5.6万円です。積立は調達期間20年のうち終了前の10年間に行われるため、単純計算で総額は約56万円という水準になります。
- 年間発電量: 50kW × 8,760時間 × 設備利用率21.3% ≒ 約9.3万kWh(想定値ベース)
- 年間積立額: 約9.3万kWh × 0.60円/kWh ≒ 約5.6万円
- 積立総額: 約5.6万円 × 10年 ≒ 約56万円
実際には発電量が経年で少しずつ低下するため、この額はあくまで想定の目安です。基準額は「想定設備利用率で発電したとき、調達期間・交付期間の終了前10年間で想定の廃棄等費用を積み立てられるkWh当たり単価」として設計されています。さらに2024年度認定以降の低圧(10kW以上50kW未満)は、実際の設備利用率が想定より1割下がっても積み立てられるよう、想定値から1割減じた設備利用率で基準額を設定しています。
基準額は認定年度によって大きく違います。初期の高単価FIT時代は撤去費用も高めに見積もられ、基準額も高く設定されていました。
| 認定年度 | 区分 | 解体等積立基準額 |
|---|---|---|
| 2012年度 | 10kW以上 | 1.62円/kWh |
| 2016年度 | 10kW以上 | 1.09円/kWh |
| 2020〜2023年度 | 10kW以上50kW未満 | 1.33円/kWh |
| 2020〜2023年度 | 50kW以上 | 0.66〜0.64円/kWh |
| 2024〜2026年度 | 地上10kW以上50kW未満 | 0.60円/kWh |
| 2024〜2026年度 | 地上50kW以上 | 0.62円/kWh |
| 2024〜2027年度 | 屋根設置 | 1.12円/kWh |
(数値は調達価格等算定委員会の別紙・2026年9月時点で確認。単価は基準額として設定された値です。)同じ50kWでも、2020年度認定なら基準額1.33円/kWhで、先ほどの発電量に当てはめると年間約12.4万円・10年で約124万円と、2倍以上の積立になります。自分の案件がどの基準額に当たるかは、認定年度で必ず確認してください。
積立はいつ始まり、いつ終わるのか

積立が売電収入から差し引かれ始めるのは、発電開始と同時ではありません。原則として、調達期間(FIPは交付期間)の終了日から起算して10年前の日以降、最初の検針日から積立が始まり、調達期間の終了日で終わります。20年の調達期間なら、運転開始から11年目以降のおおむね後半10年間が積立期間にあたります。
例外として、その開始日が2022年6月30日以前に到来してしまう古い案件(早い時期に運転を始めた案件)については、制度施行に合わせて2022年7月1日以降の最初の検針日から積立が始まっています。つまり運転開始が早かった発電所ほど、明細に積立控除が現れるタイミングも早くなっています。前半10年は控除がなく、後半に入って手取りが基準額分だけ減る点は、キャッシュフロー計画で見落とされがちです。
積立金を取り戻せる条件(判断フロー)
積み立てたお金は、解体・撤去の費用に充てる場合に取り戻せます。どこまで戻せるかは事業の畳み方で変わります。
- 発電所を全部やめる場合: 調達期間中に、基礎・架台まで含めて発電設備全体を解体・撤去して発電事業を終了するなら、積立額の全額を取り戻せます。
- 事業を縮小する場合: 一部のパネルだけ廃棄するときは、廃棄するモジュールが認定出力の15%以上かつ50kW以上であることが条件です。取り戻せるのは「想定総額の按分額」「積立済額」「実費」のうち最も小さい額までです。
- 上記に当てはまらない場合: 部分的な撤去が15%未満、または50kW未満にとどまるなら、そのタイミングでは取戻しの対象になりません。積立は調達期間終了まで続きます。
認定事業者が費用を用意できず放置した場合に、自治体が行政代執行で撤去し、その費用として積立金を取り戻す仕組みも制度に組み込まれています。積立は「事業者が逃げても撤去原資が残る」ことを狙った設計だと理解しておくとよいでしょう。
中古(セカンダリー)で売買するときの積立の扱い

中古(セカンダリー=既に稼働している発電所の売買)で発電所を買う・売るときは、積み立て済みの金額の帰属が気になります。外部積立てを行っていた認定事業者が地位を譲渡すると、積立金を取り戻せる地位は法律上自動的に譲受人へ移転します(改正再エネ特措法第15条の9)。売主が積み立ててきた分は、買主に引き継がれると考えて差し支えありません。
ただし中古取引の件数や利回りの相場については公的な統計が公表されていないため、この記事では相場の数値は示しません。パネルの更新・増設を行う場合は、当初設備に相当する分は元の調達価格を維持し、増出力に相当する分にその時点の最新価格を適用する(按分する)扱いになる点も、購入前に確認しておきたいところです。撤去費用の積立が済んでいるか、認定年度に対応する基準額はいくらかは、中古物件の実質利回りを左右する見えにくいコストです。
よくある質問
住宅用(10kW未満)にも廃棄費用の積立はありますか。
いいえ。外部積立制度の対象は事業用太陽光(10kW以上)のFIT/FIP認定事業者です。住宅用の10kW未満は制度の対象外で、撤去費用は所有者が自ら備える必要があります。
積立額は自分で振り込むのですか。
FIT案件では原則として自分で振り込みません。買取義務者である電力会社が売電の買取費用から解体等積立金を差し引いて推進機関に納付します。売電明細に控除項目として現れるのが通常です。長期安定発電の責任と能力が認められた事業者に限り、自社で積み立てる内部積立てが認められます。
積み立てた額で実際の廃棄費用は足りますか。
基準額は、想定設備利用率で発電したときに終了前10年間で想定の廃棄等費用を積み立てられる水準として設計されています。ただし実際の撤去費や産業廃棄物の処理費は立地や時期で変動するため、想定と実費が一致する保証はありません。積立は「最低限の原資を確保する」制度と捉え、差額に備える前提で資金計画を立てるのが安全です。
積立が始まる前に発電所を売ったらどうなりますか。
積立は調達期間の終了10年前から始まるため、それ以前に譲渡した場合はまだ積立が発生していないこともあります。地位を譲渡すれば取戻しの地位も買主へ自動的に移転するため、以後の積立は買主のもとで進みます。
2027年度以降に新しく地上設置を始める場合も積立はありますか。
地上設置の事業用太陽光(10kW以上)は、2026年度の落札案件を除き2027年度以降のFIT/FIP新規認定の対象とならない方針です。新規で始めるなら2026年度中の認定か中古の取得が前提になり、そのいずれでも認定を受けている限り積立制度は適用されます。
積立額は減価償却や経費にできますか。
税務上の取扱いは撤去の実施時期や事業所得・雑所得の区分によって変わるため、本記事では断定しません。減価償却や必要経費の考え方は税務の記事で扱っており、個別の判断は税理士に確認してください。
参考・出典
- 資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」(e-Govパブリックコメント版) https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000231850
- 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等について 別紙」表⑤(解体等積立基準額) https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/114_b01_00.pdf
- 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2026年度以降)」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
- 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」 https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20260205_1.pdf

