太陽光 全量買取から余剰買取への変更|売電収入は何割減るか

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「以前は低圧の太陽光でも発電した電気を全部売れたのに、今から認定を取る物件は自家消費が要ると言われた」。土地付きの50kW前後(低圧)の太陽光投資を検討・保有している方から、こうした戸惑いをよく聞きます。これは業者ごとの違いではなく、事業用太陽光(10kW以上50kW未満)のFIT(固定価格買取制度=再エネ電気を国が定めた価格で一定期間買い取る制度)の新規認定に「地域活用要件」が課されたことによる、全量買取から余剰買取への実質的な移行です。

判断の基準はシンプルです。設置する場所に、発電量の一定割合を使い切れる電力需要があるかどうか。需要がある工場や事業所の屋根・敷地なら余剰買取型のFITと相性が良く、需要のない遊休地に建てて全部売る従来型は新規では成立しにくくなっています。需要が見込めない場合は、営農型・離島の例外や、既存認定を引き継ぐ中古(セカンダリー)、50kW以上のFIPまで含めて設計するのが現実的です。以下で仕組みと影響、条件別の対策を順に見ていきます。

「全量買取から余剰買取への変更」の正体|地域活用要件

地上設置型太陽光発電所と非常用コンセントを備えた配電盤
地域と共にある発電所の風景(イメージ)

全量買取は発電した電気をすべて売る方式、余剰買取は自分で使った残り(余剰)だけを売る方式です。かつて10kW以上は全量、10kW未満の住宅用は余剰という区分が一般的でした。現在は、事業用太陽光のうち地上設置10kW以上50kW未満のFIT新規認定に、次の地域活用要件が課されています。

  • 再エネ発電設備の設置場所で、少なくとも30%の自家消費等を行うこと
  • 災害時に自立運転(ブラックスタート=停電時に外部電源なしで発電を再開すること)を行い、給電用コンセントを一般の用に供すること

この30%自家消費の条件があるため、10kW以上50kW未満の低圧区分は、新規では「全部売る」ことができず、実質的に余剰買取へ移ったといえます。これが「全量から余剰への変更」と呼ばれる中身です。なお、農地一時転用許可が3年を超える営農型太陽光は自家消費を行わなくても災害時活用を条件にFIT対象となり、沖縄地域・離島等供給エリアは地域活用要件なしでFIT認定が可能です。制度の位置づけや利回りの基本は太陽光投資とは|売電の仕組みと実質で手元に残る利回りで確認してください。

2026年度の買取価格と買取方式の対応

2026年度の主な区分の買取価格と方式は次のとおりです。価格は税抜表示で、課税事業者は消費税を加えた額、免税事業者は消費税を含む額です(2024年度以降)。

区分 2026年度の価格 買取期間 方式の考え方
住宅用(10kW未満) 1〜4年目 24円/kWh、5〜10年目 8.3円/kWh 10年 余剰買取
地上設置(10kW以上50kW未満) FIT 9.9円/kWh 20年 余剰(自家消費30%要件)
屋根設置(10kW以上) 1〜5年目 19円/kWh、6〜20年目 8.3円/kWh 20年 自家消費を前提とした支援
地上設置(50kW以上・入札対象外) FIP基準価格 9.6円/kWh 20年 FIPのみ(FIT不可)

参考として、2025年度上半期(4〜9月)の地上10kW以上50kW未満は10円/kWhでした。さらに、事業用太陽光の地上設置区分は、2026年度の落札案件を除き2027年度以降のFIT/FIP新規認定対象から外れる方針です。新設で地上型を狙うなら「2026年度中の認定」か「中古」が前提になります(いずれも2026年9月時点)。

変更で収入はどう変わるか|50kWの試算

夕暮れ時、太陽光発電所の接続箱と作業員の手
発電所の設備点検の様子(イメージ)

地上設置50kWを2026年度FIT(9.9円/kWh)で、算定委員会の想定設備利用率21.3%で運転した場合の目安です。年間発電量は50kW×8,760時間×21.3%で約93,000kWhとなります。

項目 金額・数量の目安
年間発電量 約93,000kWh
すべて売電した場合の売電収入(旧・全量型の想定) 約92万円/年
余剰買取(30%自家消費)の売電収入 約64万円/年(売電65,100kWh×9.9円)
自家消費に回る電力 約27,900kWh/年

売電収入だけを比べると、全量前提より年およそ28万円下がる計算です。ただし自家消費に回る約27,900kWhは、その分の電力購入を減らす効果があるため、この差額は「消える」のではなく「買う電気の削減で取り戻す」性質のものです。したがって、自家消費できる需要が現地にあるかどうかで実質的な採算が大きく変わります。屋根設置10kW以上では自家消費分の便益を19.56円/kWh、住宅用10kW未満では27.31円/kWhと想定しており、売る価格より自家消費の価値が高い設計になっています。

あなたは影響を受けるか|条件別の判断フロー

新規認定で余剰買取(自家消費要件)の影響を受けるかは、次の順で確認すると整理できます。

  1. 設置場所に電力需要(工場・事業所・店舗など)があるか。 ある → 30%自家消費を満たしやすく、余剰型FITでそのまま進めやすい。ない → 次へ。
  2. 農地で営農を続け、3年超の一時転用許可を取れるか。 取れる → 営農型として、自家消費なしでも災害時活用を条件にFIT対象になり得る。
  3. 沖縄地域・離島等供給エリアか。 該当 → 地域活用要件なしでFIT認定が可能。
  4. いずれも該当せず、規模を50kW以上にできるか。 できる → 50kW以上はFIP(基準価格9.6円/kWh、入札対象外区分)での認定を検討。
  5. 新規認定が難しい。 → 既に認定済みの案件を引き継ぐ中古(セカンダリー)を検討。

すでに全量売電で認定を受けている既設設備は、原則としてその認定時の条件が引き継がれます。変更の影響を主に受けるのは、これから新規に認定を取る案件だと理解しておくとよいでしょう。

全量から余剰への切り替えで取るべき対策

需要のない遊休地に建てて全量で売る従来のモデルが使いにくくなった以上、投資の設計を次の方向に寄せるのが基本です。

自家消費できる需要地に置く

自社の工場・倉庫・事業所の屋根や敷地に設置し、日中の電力需要で自家消費30%を無理なく満たす設計にします。屋根設置10kW以上は初期の買取価格が19円/kWh(1〜5年目)と手厚く、自家消費の便益(想定19.56円/kWh)と合わせて採算を組みやすい区分です。

営農型・離島の例外を使う

農業を続けながら発電する営農型(ソーラーシェアリング)は、3年超の一時転用許可なら自家消費なしでも災害時活用を条件にFIT対象になり得ます。離島等供給エリアも地域活用要件が不要です。

中古(セカンダリー)で既存認定を引き継ぐ

既に全量で認定を受けた発電所を取得すれば、その認定条件のまま運用できます。廃棄等費用の外部積立を行っていた案件では、積立金を取り戻せる地位も法律上自動的に移転します。ただしセカンダリー市場には公的な取引・利回り統計がないため、個別物件の実績を自分で精査する必要があります。分譲・土地付きや中古の物件比較から始めたい場合は、物件情報とO&M体制を持つ事業者に相談するのが早道です。

住宅用の「卒FIT」と余剰買取の関係

太陽光パネルを設置した住宅と充電中のEV
自家消費する暮らしの風景(イメージ)

住宅用(10kW未満)はもともと余剰買取で、2009年11月開始の余剰電力買取制度以来の設備が2019年11月以降、順次10年間の買取期間を満了しています(卒FIT)。満了後は法律に基づく買取義務がなくなるため、EV・蓄電池と組み合わせて自家消費するか、小売電気事業者やアグリゲーター(発電を束ねて取引する事業者)と自由契約で余剰を売るのが基本です。事業用でも自家消費前提へと制度が動いている点は共通しており、「売る前提」から「使ってから売る前提」への流れとして捉えると理解しやすくなります(資源エネルギー庁 2018年9月資料に基づく)。

よくある質問

今から低圧(10〜50kW)を全量売電で認定できますか。

地上設置の10kW以上50kW未満の新規FIT認定には30%以上の自家消費を求める地域活用要件があり、全量売電での認定はできません。営農型(3年超の一時転用)や離島等供給エリアが例外です(2026年9月時点)。

自家消費30%を満たせないと認定は取れませんか。

地上設置10kW以上50kW未満のFIT新規認定では、自家消費等30%と災害時自立運転が要件です。満たせない立地では、営農型・離島の例外に当たるか、50kW以上のFIP、または既存認定を引き継ぐ中古を検討することになります。

すでに全量で認定済みの発電所はどうなりますか。

原則として認定時の条件が引き継がれます。制度変更の影響を主に受けるのは新規認定の案件です。個別の扱いは認定内容によるため、認定情報を確認してください。

余剰買取に変わると利回りは下がりますか。

売電量が減る分だけ売電収入は下がりますが、自家消費分は購入電力の削減で価値が生じます。現地に電力需要があるほど実質採算は保たれやすく、需要のない土地ほど不利になります。

50kW以上にすれば全量で売れますか。

2026年度は50kW以上(入札対象外)はFIP(基準価格9.6円/kWh)のみで、FITは認められません。FIPは市場価格に連動し、地域活用要件の自家消費30%とは別の制度である点を踏まえて設計する必要があります。

買取価格や制度はいつの時点のものですか。

本記事の価格・要件は2026年度・2026年9月時点の公表値に基づきます。年度で改定されるため、認定前に資源エネルギー庁の最新情報を確認してください。

参考・出典

  • 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2026年度以降)」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
  • 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等について 別紙」 https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/114_b01_00.pdf
  • 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」 https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20260205_1.pdf
  • 資源エネルギー庁 資料3「住宅用太陽光発電設備のFIT買取期間終了に向けた対応」(2018年9月) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/008_03_00.pdf
  • イーゲート株式会社(公式サイト) https://www.e-gate.co.jp/
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