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2015年ごろに自宅へ太陽光パネルを載せた家庭では、10年間の固定価格買取(FIT)の期間がちょうど満了を迎え始めています。検針票に載っていた高めの売電単価が、ある月を境に大きく下がる。あるいは電力会社から「買取期間終了のご案内」という書面が届いて、「11年目からいくらで売れるのか」「そもそも売り続けられるのか」がわからず手が止まっている、という方が多いはずです。
先に結論を言い切ります。FIT満了後(卒FIT)の判断は、「単価をどこまで上げるか」ではなく「売るより使う設計に切り替えるかどうか」を軸にするのが基本です。満了後の売電単価は制度で保証された水準ではなくなり、電力会社ごとの自由契約になります。国の審議会が使う想定でも満了後の売電価格は10円前後にとどまる一方、電気を買う単価はそれより高いため、自家消費に回した1kWhのほうが得になりやすいからです。以下では、11年目以降に何が変わり、どの選択肢を、どんな数字で選べばよいかを整理します。
FIT終了で何が変わるのか(買取義務の消滅)

FIT(固定価格買取制度)は、発電した電気を国が定めた単価で一定期間、電力会社が買い取ることを義務づける制度です。買取期間は太陽光の規模で決まっており、住宅用(10kW未満)は10年間、事業用(10kW以上)は20年間です。この期間が満了すると、法律に基づく買取義務そのものが無くなります(資源エネルギー庁 2018年9月資料)。
ここが最大の分かれ目です。11年目以降は「単価が下がる」のではなく、「決まった条件で買い取ってもらう権利が終わる」ということです。発電した電気の使い道は、大きく次の2つに整理されます。
- EV(電気自動車)や蓄電池と組み合わせて、自宅・自社でそのまま使う(自家消費)
- 小売電気事業者やアグリゲーター(複数の需要家や発電をまとめて電力を調整する事業者)と相対(あいたい)・自由契約を結び、余った電気を売る
住宅用のFITは2009年11月に始まった余剰電力買取制度から続く仕組みで、その10年後にあたる2019年11月以降、買取期間の満了が順次発生しています。2019年の11月・12月だけで約53万件、累積では2023年までに約165万件・670万kW分が満了に達したとされ、「卒FIT」はすでに珍しい話ではありません(資源エネルギー庁 2018年9月資料)。
11年目以降の選択肢と判断フロー
買取義務が消えた後の道は、突き詰めると「そのまま売る」「使う側に寄せる」「規模を見直す」の3系統です。次の順で条件を当てはめると迷いにくくなります。
判断フロー(条件→結論)
- 昼間に自宅・自社で電気を使う量が多いか。多いなら、余剰を売るより自家消費に回すほうが得になりやすい。判断は次項の単価差で行う。
- 追加投資(蓄電池・EV)をせず、手間もかけたくないか。その場合は、契約している電力会社の卒FIT向けプランで「そのまま売る」のが現実的。単価は下がるが機器投資は不要。
- 設備が健全で、まだ十分に発電するか。パネルの出力保証(例として25年で公称出力の80%といった水準)が目安。発電が細っていれば、売却や撤去を含む出口も選択肢に入る。
- 投資として次の一手を考えているか。住宅用の卒FITを機に、より利回りの取りやすい分譲・中古の事業用太陽光へ資金を振り向ける判断もある。
1つ目の「使う量」が読めない場合は、まず1で立ち止まってください。売電単価だけを比較して売り先を乗り換えても、自家消費に回せば節約できたはずの分を取りこぼすことがあるためです。売り先そのものの単価比較は本記事では深掘りしませんが、選ぶ際は「単価の高さ」だけでなく契約期間・解約条件・手続きの手間を合わせて見るのが安全です。
FIT終了後の買取価格の目安(想定値と現実)

満了後の売電単価は自由契約なので、全国一律の「正解の単価」は存在しません。ただし、国の調達価格等算定委員会は将来のコスト回収を試算する際に「調達期間終了後の売電価格」を置いており、これが公的な目安として参考になります。
| 区分 | 調達期間終了後の想定売電価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 住宅用(10kW未満) | 10.0円/kWh | 設備利用率13.7%・余剰売電比率70%を前提とした想定 |
| 事業用 地上設置(10kW以上50kW未満) | 2025年度想定 11.6円/kWh 2026年度想定 9.6円/kWh |
年度の想定見直しで低下 |
| 事業用 地上設置(50kW以上) | 10.0円/kWh | 入札対象外区分の想定 |
数値は算定委員会の想定値(2026年9月時点で確認できる公表資料)で、実際に契約できる単価はこれと前後します。いずれにせよ、FIT期間中の後半単価(例として2026年度に新規認定を受けた住宅用は5〜10年目が8.3円/kWh)と同じか、それより低い水準に落ち着くのが実情です。
計算例:売るより使うほうが得になりやすい理由
住宅用の想定値で、4kWのシステムを例に考えます。設備利用率13.7%で試算すると、年間発電量はおおむね次のとおりです。
- 年間発電量:4kW × 8,760時間 × 13.7% ≒ 約4,800kWh
- 従来どおり7割(余剰売電比率70%)を売電し、満了後の想定10.0円/kWhで売ると:約3,360kWh × 10円 = 約33,600円/年
一方、算定委員会が住宅用で置く「自家消費分の便益」は27.31円/kWh(2025年)です。これは自家消費した電気が、買わずに済んだ電力の単価に相当するという考え方です。つまり同じ1kWhでも、売れば約10円ですが、自宅で使えば約27円分の電気を買わずに済む計算になります。この差が、卒FIT後に「売る」より「使う」を軸に考える根拠です。蓄電池やEVを足すかどうかは別途投資回収の見極めが要りますが、11年目以降に単価だけを追いかけない判断の土台になります。
事業用(10kW以上・20年)の終了はいつ、どう違うか
事業用太陽光の買取期間は20年間です。2012年度にFITが始まっているため、初期の認定案件から順に20年の満了時期に近づいていきます(具体的な満了年は認定・連系の時期で個別に決まるため、ここでは断定しません。ご自身の調達期間20年から逆算してください)。
住宅用との違いは、規模が大きい分だけ満了後の設計の重みが増す点です。50kW以上の区分は近年FIP制度(市場価格に連動して売電し、基準価格との差額に応じたプレミアムを受け取る仕組み)が中心になっており、満了後も含めて相対契約・市場売電の巧拙が収益に効きます。また、事業用(10kW以上)には廃棄等費用の積立てが義務づけられており、これは調達期間の終了前10年間で積み立てる設計です。満了に向けては、この積立金の取戻し手続きや、設備を継続運用するか撤去するかの出口判断が同時に走ることになります。太陽光投資の全体像や利回りの考え方は、太陽光投資とは|売電の仕組みと実質で手元に残る利回りで整理しています。
卒FITの手続きと確認しておくこと

買取期間の満了が近づくと、契約している電力会社から案内が届くのが一般的です。放置しても発電・売電が突然ゼロになるわけではありませんが、条件を確認しないまま満了後の低い単価で自動的に売電が続く場合があります。11年目に入る前後で、次の点を確認しておくと判断しやすくなります。
- 満了日:連系(電力会社の系統につないだ日)から起算した買取期間の終了日。住宅用は10年、事業用は20年。
- 満了後の売電条件:今の電力会社の卒FIT向けプランの単価・契約期間・解約条件。他社やアグリゲーターへの切り替え可否。
- 自家消費への切替余地:昼間の使用量、蓄電池・EV導入の投資回収見込み。
- 設備の健全性:発電量の落ち込み、パワーコンディショナー(直流を交流に変換する機器)の交換時期。
- 事業用は積立金と出口:廃棄等費用積立金の取戻し要件、継続運用・売却・撤去の比較。
売電単価は自由契約になったとはいえ、変更には手続きと期間の縛りが伴うことがあります。「とりあえず様子見」で満了を迎える前に、少なくとも満了後の単価と契約条件だけは把握しておくのが安全です。
よくある質問
FITが終わると売電はできなくなるのですか。
売電自体は続けられます。無くなるのは「決められた単価で電力会社が買い取る法律上の義務」です。満了後は小売電気事業者やアグリゲーターとの自由契約で余剰電力を売る形になり、単価は各社が設定します。
11年目以降の買取価格はいくらになりますか。
全国一律の決まった単価はありません。国の算定委員会が試算に使う想定では住宅用で10.0円/kWh前後ですが、実際に契約できる単価は電力会社ごとに異なります(2026年9月時点の公表資料に基づく目安)。
売るのと自家消費、どちらが得ですか。
昼間に自宅・自社で電気を使う量が多いほど自家消費が有利になりやすいです。売れば約10円/kWhでも、自家消費すれば買わずに済む電気(住宅用の想定便益27.31円/kWh)を節約できるためで、単価差が大きいほど「使う」設計が効きます。
何もしないと売電単価は自動で下がりますか。
多くの場合、満了後は電力会社の案内した卒FIT向けプランへ移り、FIT期間中より低い単価で売電が続きます。条件を確認しないまま自動継続になることがあるため、満了前に単価と解約条件を確認しておくのが安全です。
事業用(10kW以上)はいつFITが終わりますか。
事業用の買取期間は20年間です。満了年は連系・認定の時期で個別に決まるため一律には言えません。ご自身の調達期間20年から逆算し、あわせて廃棄等費用積立金の取戻しや設備の出口も検討してください。
卒FITを機に投資を広げるのはありですか。
選択肢の一つです。住宅用の卒FITで得られる金額は限られるため、より利回りを取りやすい分譲・中古の事業用太陽光へ資金を振り向ける判断もあります。ただし新設は制度改正の影響を受けるため、認定時期や中古(セカンダリー)の前提を確認したうえで比較してください。
参考・出典
- 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2026年度以降)」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
- 資源エネルギー庁 資料3「住宅用太陽光発電設備のFIT買取期間終了に向けた対応」(2018年9月12日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/008_03_00.pdf
- 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等について 別紙」 https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/114_b01_00.pdf
- 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」 https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20260205_1.pdf

