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低圧50kWの野立て太陽光を購入し、初めての確定申告を事業所得で済ませた個人投資家が、しばらくして都道府県税事務所から「事業税」に関する案内を受け取り、所得税や住民税とは別にもう一つ地方税があるのかと戸惑う、という場面はよくあります。さらに法人化を検討し始めると、法人の事業税では売電が「電気供給業」に区分され、もうけ(所得)ではなく売上(収入金額)そのものに課される収入割という耳慣れない方式が出てきて、個人のときと計算の土台が変わることに気づきます。
判断の軸は二つです。第一に、自分の売電が事業税の対象になる規模・実態か(事業として反復・継続して行い、どれだけの利益が出ているか)。第二に、個人か法人かで課税の土台が変わり、法人の電気供給業は所得割ではなく収入割になる点です。この記事は太陽光の売電にかかる事業税を、収入割の考え方・対象になる規模・改正・申告書の順に整理します。所得税の確定申告や消費税、固定資産税(償却資産)はそれぞれ別の記事で扱うため、ここでは事業税に絞ります。太陽光投資全体の利回りや仕組みは太陽光投資とは|売電の仕組みと実質で手元に残る利回りで確認できます。
太陽光の売電がなぜ「電気供給業」の事業税の対象になるのか

事業税は、事業を行う個人や法人に対して都道府県が課す地方税です。地方税法で定められた業種に当たる事業が対象で、電気を供給する事業=電気供給業もその一つに位置づけられています。太陽光発電で作った電気を電力会社などに売る売電は、反復・継続して電気を供給する事業と見られる場合、この電気供給業に該当します。所得税・住民税とは別に、都道府県が独自に課す税金だという点がまず出発点です。
ここで前提になるのが「事業として」行っているかどうかです。国税庁の整理でも、売電収入は事業として行う場合は事業所得、給与所得者が家庭用に設置した余剰売電などは雑所得と、実態で所得区分が分かれます。事業税でも同じ考え方で、事業と認められる規模・実態かどうかが最初の分かれ目になります。家庭用の小さな余剰売電で雑所得にとどまるような規模であれば、そもそも事業税の対象になりにくいと考えられます。
収入割と所得割は何が違うのか
事業税の課税の土台(課税標準)には大きく二つあります。もうけに課す所得割と、売上そのものに課す収入割です。太陽光の事業税を理解するうえで、この二つの違いが核になります。
| 方式 | 課税の土台 | 主な対象 | 太陽光での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 所得割 | 所得(収入から必要経費を引いた額) | 多くの業種の事業 | 個人事業税や、一般の事業を行う法人 |
| 収入割 | 収入金額(売上そのもの) | 電気供給業・ガス供給業・保険業など | 法人が電気供給業(売電)を行う場合 |
重要なのは、収入割は経費や赤字に関係なく売上に対して課税の土台が立つ点です。所得割なら赤字の年は事業税が出ませんが、収入割は売電収入があれば土台が生まれます。太陽光の売電は初期の減価償却費が大きく会計上は赤字になりやすいため、収入割か所得割かで負担の出方が大きく変わります。
個人と法人で課税方式が変わる規模の線

収入割が実際に問題になるのは、主に法人です。個人事業税では、電気供給業は法律で定められた業種(法定業種)の一つとして所得を土台に課税され(所得割)、収入割は用いられません。一方、法人が電気供給業を行うと、法人事業税は収入金額を土台とする収入割になります。つまり、同じ太陽光の売電でも、個人のうちは所得ベース、法人化すると収入ベースへと課税の土台が切り替わるのが、この記事で最も押さえるべき点です。
自分がどちらに当たるかの判断フロー
- 売電を事業として反復・継続して行っているか。家庭用の余剰売電で雑所得にとどまる規模なら、事業税の対象になりにくい。
- 個人か法人か。個人なら所得割(電気供給業の法定業種として所得に課税)、法人なら収入割(売上に課税)。
- 個人事業税には、所得から差し引ける事業主控除がある。年間の所得がその控除額以下なら課税されない。
- 法人の収入割は売上に課されるため、赤字の年でも土台が立つ。法人化の判断では、所得税・法人税の差だけでなく、事業税の土台が所得から収入へ変わる点まで含めて試算する。
「規模の線」は、個人では事業と認められるか、かつ事業主控除を超える所得かという二段で見ます。法人では、電気供給業に区分される事業実態かどうかで収入割の対象になります。具体的な所得金額の基準や税率は年度で変わるため、設置場所を管轄する都道府県税事務所に確認するのが確実です。法人化そのものの損得は別の記事で扱うため、ここでは課税の土台の違いだけを押さえます。
物件ごとに利益の出方も税負担の全体像も変わるため、保証内容や保守費用まで含めて分譲物件を比較したい場合は、資料や個別相談で条件を確認しておくと判断しやすくなります。
改正はいつから、何が変わったのか
電気供給業の事業税は、電力小売の全面自由化や発電事業の広がりを受けて、課税の区分が見直されてきました。従来は電気供給業をひとくくりに収入割としていましたが、発電事業・小売電気事業などの区分ごとに課税方式を整理する改正が行われています。太陽光発電(発電事業)がどの区分でどの方式になるか、いつの年度から適用されるかは、制度の沿革に関わる重要点です。
ただし、改正の具体的な施行年度・区分ごとの税率・適用対象の規模は、総務省や都道府県の一次資料で年度を明記して確認する必要があります。なお、太陽光投資は地上設置の新規認定が2027年度から止まる方向で示されているため、これから設ける設備は2026年度中の認定か中古(セカンダリー)設備が前提になります。改正の適用時期は、自分の設備がいつ認定・稼働したかとあわせて確認してください。
事業税の申告書と納付の流れ

事業税の手続きは個人と法人で大きく異なります。どちらも所得税・法人税とは別に、都道府県への手続きがある点に注意します。
個人の場合
個人事業税は、原則として事業税の申告書を自分で作らなくても、所得税の確定申告や住民税の申告の内容が都道府県に回り、都道府県が税額を計算して納税通知書を送る「賦課課税」です。確定申告で事業所得を申告していれば、別途の事業税申告は不要なことが多く、届いた通知に基づいて年2回程度に分けて納めます。事業を始めたときは、都道府県への開業の届出(事業開始等申告書)も必要です。
法人の場合
法人事業税は、法人税の申告とあわせて自分で計算して申告・納付する「申告納税」です。事業年度終了後、原則2か月以内に法人事業税などの申告書を都道府県に提出します。電気供給業は収入割で計算するため、申告書上も収入金額を課税標準として記載します。太陽光以外の事業を兼ねる法人では、電気供給業とそれ以外で課税方式が分かれるため、区分して経理する必要があります。
なお、事業税は所得税・法人税の計算上、必要経費・損金に算入できる税金です。売電の消費税の区分(電気業は簡易課税で第3種・みなし仕入率70%)や、設備にかかる固定資産税(償却資産・標準税率1.4%)は別の税目で、事業税とは課税の土台も申告先も異なります。これらはそれぞれ別の記事で扱います。
本記事の制度・税率は2026年9月時点の理解に基づきます。事業税の税率や区分は改正で変わるため、実際の申告前には総務省・都道府県税事務所の最新の案内で確認してください。
よくある質問
太陽光の売電に事業税はかかりますか
売電を事業として反復・継続して行っている場合は、電気供給業として事業税の対象になり得ます。家庭用の余剰売電で雑所得にとどまるような規模では、対象になりにくいと考えられます。実態と規模で判断されるため、迷う場合は都道府県税事務所に確認してください。
収入割だと赤字でも税金がかかりますか
収入割は所得ではなく売上(収入金額)を課税の土台とするため、会計上が赤字でも、売電収入があれば課税の土台は立ちます。減価償却で赤字になりやすい初期でも土台が生じる点が、所得割との大きな違いです。
個人でも収入割になりますか
個人事業税では、電気供給業は所得を土台とする所得割で課税され、収入割は用いられません。収入割が問題になるのは、原則として法人が電気供給業を行う場合です。個人のうちは所得ベース、法人化すると収入ベースへ土台が変わると整理できます。
事業税の申告書は自分で出す必要がありますか
個人は賦課課税で、確定申告の内容をもとに都道府県が計算し通知するため、別途の事業税申告は不要なことが多いです。法人は申告納税で、法人税の申告とあわせて自分で申告書を提出します。個人でも開業時の届出は必要です。
50kW未満の低圧でも事業税の対象ですか
事業税の対象かどうかは設備の出力そのものではなく、事業として行っているかと課税上の区分で判断されます。低圧でも事業として売電していれば対象になり得ます。
改正はいつからですか
電気供給業の課税区分は複数回見直されてきましたが、施行年度と発電事業の扱いは一次資料で年度を明記して確認する必要があります。自分の設備の認定・稼働時期とあわせて適用時期を確認してください。
事業税は経費になりますか
事業税は、所得税・法人税の計算上、必要経費または損金に算入できる税金です。納めた事業税は、翌年以降の所得計算で経費として扱えます。詳しい計上のしかたは確定申告や節税の記事で扱います。
参考・出典
- 国税庁 質疑応答事例「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」(所得区分の判定) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/44.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」(電気業は第3種・みなし仕入率70%) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
- 総務省「固定資産税の概要」(地方税の位置づけ・標準税率) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html
- 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2026年度以降)」(対象規模・2027年度以降の扱い) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
- イーゲート株式会社 公式サイト(分譲・土地付き太陽光、2026年9月時点・公式サイト確認) https://www.e-gate.co.jp/

