太陽光 設置費用の推移|10年でどこまで下がったか

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「10年前に太陽光を始めた知人は表面利回り20%だったと言っていた。いま物件情報サイトを見ると利回りは10%前後で、もう遅かったのか」。投資として太陽光を検討し始めた人が、最初につまずくのがこの感覚です。過去の高い利回りと今の数字を並べると、確かに見劣りします。ただ、その比較は売電単価(電力会社が買い取る1kWhあたりの価格)の推移だけを見ているために起きる誤解です。

結論から言えば、太陽光の設置費用は下がり続けており、売電単価も同じ方向に下がってきました。判断の基準は「単価がいくら下がったか」ではなく「単価の下がり方に、設置費用の下がり方が追いついているか」です。直近数年は単価がほぼ横ばいのまま費用だけが下がっており、そこだけを切り取れば投資条件はむしろ改善しています。本記事では資源エネルギー庁(経済産業省)の公表データで設置費用の推移をたどり、売電単価と重ねて、費用が下がると利回りが保たれる構造を数字で確認します。

設置費用は十余年でどこまで下がったか

日本の広大な太陽光発電所と点検作業員
広大な太陽光発電所の点検風景(イメージ)

資源エネルギー庁の調達価格等算定委員会は、事業者が提出する定期報告をもとに、認定年度ごとのシステム費用の中央値(データを小さい順に並べた真ん中の値。平均より外れ値の影響を受けにくい)を公表しています。地上設置で、認定を受けた年度と同じ年に設置された案件の1kWあたりシステム費用は次のように推移しました。

認定年度 システム費用中央値(地上設置)
2012年度 37.3万円/kW
2019年度 25.4万円/kW
2020年度 24.8万円/kW
2021年度 24.3万円/kW
2022年度 21.4万円/kW
2023年度 22.7万円/kW
2024年度 19.2万円/kW
2025年度 15.0万円/kW

FIT制度(固定価格買取制度。再エネで発電した電気を国が定めた価格で一定期間買い取る仕組み)が始まった2012年度の37.3万円/kWから、2025年度認定分の15.0万円/kWまで、およそ6割下がりました。途中、2023年度が前年より上がっているように見えますが、この年は集計対象の件数が少なく、資材価格の一時的な高騰も重なった年です。単年の上下ではなく、右肩下がりの大きな流れとして読むのが妥当です。

いま実際に建てられている案件の水準も確認しておきます。2025年に設置された地上設置(10kW以上)の全案件で見ると、システム費用の中央値は19.7万円/kW、平均値は20.3万円/kW でした。屋根設置は中央値18.5万円/kW です。認定年度別の15.0万円/kW より高いのは、こちらが古い年度に認定された案件も含む全体の数字だからです。これから新しく認定を取って建てる場合の目安は、この2つの数字の間、おおむね15万円台から20万円台前半と押さえておくとよいでしょう。

費用が下がった理由はパネルの国際価格

下落の主因は太陽光パネル(モジュール)の価格低下です。2025年に設置された地上案件のシステム費用の内訳は、パネルが約33%、工事費が約33%を占めます。残りが架台やパワーコンディショナー(発電した直流を交流に変換する装置)などです。つまり費用の3分の1を占めるパネルが下がれば、システム全体が下がります。

そのパネルの国際市況を見ると、単結晶シリコン・モジュールの平均スポット価格は2025年8月20日時点で0.088ドル/W(1kWあたり約1.36万円相当)でした。前年8月は0.096ドル/W(同約1.50万円)だったので、1年でおよそ8%下がっています。ここで示した1.36万円/kW はパネル単体の国際的な取引価格であり、日本国内で実際に設置するときの費用(輸送・流通・据付を含む)とは別物です。数字の桁が違うのはそのためで、あくまで「原料に近いパネル価格が下がり続けている」という方向を読むための指標です。

売電単価も同じだけ下がっている

太陽光発電所の配線を点検する作業員の後ろ姿
太陽光発電所の点検作業(イメージ)

費用だけを見れば「安くなって好条件」に見えますが、太陽光投資の収入源である売電単価も同時に下がってきました。事業用(10kW以上)の買取価格の推移は次のとおりです(税抜。地上設置10kW以上の参考値)。

認定年度 買取単価(10kW以上・地上)
2012年度 40円/kWh
2019年度 14円/kWh
2022年度 11円/kWh
2023年度 10円/kWh
2025年度 10円/kWh(10〜50kW)
2026年度 9.9円/kWh(10〜50kW)

2012年度の40円/kWhから2025年度の10円/kWhへ、単価は4分の1になりました。下落率でいえば約75%で、設置費用の下落(約6割)よりも大きく下がっています。ここだけを見て「昔より不利になった」と感じるのは自然です。

ただし注目すべきは直近の動きです。単価は2022年度あたりから10円/kWh前後で横ばいに落ち着いた一方、設置費用は21.4万円/kW(2022年度)から15.0万円/kW(2025年度)へ、さらに3割近く下がりました。つまり最近の数年は、収入側は据え置きのまま、支出側だけが軽くなっているということです。

費用が下がると利回りが保たれる構造(50kWの計算例)

単価と費用の両方を、実際の利回りに落として比べてみます。ここでは50kWの地上設置を例に、設備利用率(設備が定格出力でフル稼働したと仮定したときに対する実際の発電量の割合)を算定委員会の2025年度想定値である21.3%として計算します。年間発電量は1kWあたり8760時間×21.3%=約1,866kWh、50kWで約93,300kWh です。表面利回りは「年間売電収入÷物件価格」で、ここでは物件価格をシステム費用のみとして各年度の数字を当てはめます。

認定年度 システム費用 単価 表面利回り(試算)
2012年度 37.3万円/kW 40円/kWh 約20.0%
2019年度 25.4万円/kW 14円/kWh 約10.3%
2022年度 21.4万円/kW 11円/kWh 約9.6%
2025年度 15.0万円/kW 10円/kWh 約12.4%

利回りは20.0%から10%台前半へいったん圧縮され、直近の2025年度では12.4%へ戻しています。V字ではありませんが、単価の下落率(75%)がそのまま利回りの崩壊にはつながっていないことが読み取れます。理由は費用が一緒に下がったからです。

これをはっきりさせるために、逆の仮定を置いてみます。もし2025年度の単価10円/kWhのまま、設置費用が2012年度の37.3万円/kWから下がっていなかったとしたら、表面利回りは約5.0%まで落ちていました。実際にはそうならず12.4%を保てているのは、費用が15.0万円/kWまで下がったおかげです。「単価が下がったから太陽光はもう終わり」という見方が一面的なのは、この費用側の下落を勘定に入れていないからです。

なお、この試算はシステム費用だけを物件価格とみなした表面利回りで、土地造成費・接続費・運転維持費・廃棄費用の積立・償却資産税といった年間コストは含んでいません。実際に手元に残る実質利回りはこれより低くなります。表面と実質の差がどこで生まれるか、利回りの定義そのものは太陽光投資とは|売電の仕組みと実質で手元に残る利回りで整理しています。設備利用率を全年度一律21.3%としているのも比較のための単純化で、立地や設置年による差はあります。

これから費用はさらに下がるのか、判断の分かれ目

夕日の中、太陽光発電の予定地を見つめる人物
これからを静かに考える情景(イメージ)

パネルの国際価格が下がり続けている以上、設置費用の低下余地は残っています。ただし投資判断は費用だけで決められません。制度側の変化と重ねて見る必要があります。次の順で確認すると整理しやすくなります。

  1. いつ認定を取るか。地上設置(10kW以上)は、2026年度の落札案件を除き、2027年度以降はFIT/FIPの新規認定の対象外となる方針が示されています。新設で地上設置を狙うなら、費用がさらに下がるのを待つほど、認定を取れる期間の締め切りが近づきます。
  2. 費用低下と締め切りのどちらが効くか。パネルが今後1年でさらに数%下がっても、システム費用全体では数%の圧縮にとどまります。一方で認定機会を逃せば、その物件は建てられません。待つことで得られる費用減より、機会を失う損の方が大きくなりやすい局面です。
  3. 新設が難しければ中古を含めて考える。すでに認定・稼働している中古(セカンダリー)案件は、上記の締め切りの外側で取得できます。ただし取引件数や利回りの公的な統計はなく、個別の設備状態と残りの買取期間を見て判断する必要があります。

設置費用の推移は「安くなったから今すぐ」でも「まだ下がるから待つ」でもなく、制度の締め切りと突き合わせて読むものです。費用が下がった恩恵は、認定を取れて初めて手に入ります。

よくある質問

設置費用のグラフはどこで確認できますか。

資源エネルギー庁の調達価格等算定委員会が公表する資料に、認定年度別のシステム費用中央値が掲載されています。本記事の表もこの一次資料の数字に基づいています。出典のURLは記事末尾に記載しました。

10年で設置費用は具体的に何割下がりましたか。

地上設置のシステム費用中央値は、2012年度の37.3万円/kWから2025年度認定分の15.0万円/kWへ、およそ6割下がりました。同じ期間に売電単価は40円/kWhから10円/kWhへ約75%下がっています。

費用が下がったのに利回りが劇的に上がらないのはなぜですか。

収入源である売電単価も同時に下がったからです。特に2012年度から2019年度にかけては単価の下落が費用の下落を上回り、利回りは圧縮されました。ただし単価が横ばいに落ち着いた2022年度以降は、費用だけが下がるため利回りは持ち直す方向にあります。

いま建てるなら1kWあたりいくらが目安ですか。

2025年に設置された地上設置(10kW以上)の実績では、システム費用の中央値が19.7万円/kW、最新の2025年度認定分では15.0万円/kW でした。新設の目安はおおむね15万円台から20万円台前半です。屋根設置は中央値18.5万円/kW でした。いずれもシステム費用のみで、土地造成費や接続費は別途かかります(2026年9月時点・公式資料確認)。

パネル価格はこれからも下がりますか。

単結晶シリコン・モジュールの国際スポット価格は2025年8月時点で0.088ドル/W と、前年同月の0.096ドル/W から約8%下がっており、低下傾向は続いています。ただし将来の価格は為替や需給で変動するため、断定はできません。設置費用の3分の1がパネルなので、パネルが下がればシステム費用も下がる関係にあります。

売る側の価格(買取単価)の推移だけを見て判断してよいですか。

おすすめしません。買取単価が下がっても、設置費用が同じかそれ以上に下がっていれば投資条件は保たれます。単価の推移と費用の推移を必ず重ねて見てください。本記事の計算例のように、費用が下がらなかった場合との比較で構造がわかります。

参考・出典

  • 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2026年度以降)」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
  • 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等について 別紙」 https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/114_b01_00.pdf
  • 資源エネルギー庁 資料1「太陽光発電について」(2026年1月) https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/110_01_00.pdf
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